甲状腺機能亢進症(ホルモン過剰)となる病気
無痛性甲状腺炎
無痛性甲状腺炎とは
何らかの原因で、甲状腺組織が破壊され、甲状腺ホルモンが血液中に流れてしまい、一時的な甲状腺ホルモン過剰状態(破壊性甲状腺中毒症)となります。
治療について
特に治療をしなくても、数か月以内に正常化することが多く、バセドウ病などによる甲状腺機能亢進症とは異なります。
橋本病の患者さんに発症することが多いとされますが、橋本病でない方や、バセドウ病寛解中に発症することもあります。
また、出産後2-4か月後の授乳期間に発症することがあり、産後甲状腺炎といいます。
頻拍などの症状が強い場合は、脈拍を抑える薬を一時的に使う場合があります。
バセドウ病治療の薬である抗甲状腺薬は使ってはいけません。
産後甲状腺炎
出産後に発症する無痛性甲状腺炎を産後甲状腺炎といい、出産後7-8%程度の頻度で生じるとされます。
甲状腺機能亢進症による頻脈などの症状が強い場合には、授乳中でも内服可能なプロプラノロールなどを投与することがあります。
長期的には、25-30%の頻度で、永続性甲状腺機能低下症となり、甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS)の内服を要するという報告もあります。
橋本病に関係する自己抗体である抗TPO抗体が陽性の方は、特に注意が必要です。
亜急性甲状腺炎
甲状腺のある前頚部が痛くなる疾患の1つです。
ウイルス感染が原因ともいわれていますが、確証はありません。
無痛性甲状腺炎との違い
甲状腺組織が破壊され、甲状腺ホルモン過剰状態(破壊性甲状腺中毒症)となるのは無痛性甲状腺炎と同様ですが、痛みを伴うこと、発熱などの炎症所見を伴う点で異なります。
痛みの移動(クリーピング)
痛みの強さは様々ですが、典型例では、痛みの部分が数日の間に移動する(クリーピングといいます)のが特徴です。
治療について
症状が軽い場合は投薬なしでも自然軽快しますが、痛みや頻脈などの症状が強い場合は、内服治療を行います。
症状が強い場合でも、ステロイド剤の内服により劇的に改善しますが、内服量の漸減が必要になるので、中止までに数か月を要することになります。
中毒性結節性甲状腺腫(甲状腺過機能結節、プランマー病)
甲状腺のしこりの多くが、ホルモンを産生しませんので、しこりの病気の患者さんの多くは、甲状腺機能は正常です。
しかし、稀に、しこりがホルモンを過剰産生することがあり、甲状腺機能亢進症の原因となることがあります。
しこりの種類
ホルモンを過剰産生するしこりは、1つの場合(単結節性)と複数の場合(多結節性)とあります。
バセドウ病が、甲状腺全体でホルモンを過剰産生するのに対して、しこりの部分のみの過剰産生であり、シンチグラフィーで鑑別できます。
治療について
放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)か手術治療が推奨されます。
ホルモンを過剰産生するしこりが悪性であることは稀で、ほとんどが良性腫瘍です。