甲状腺機能低下症(ホルモン不足)となる病気
- 橋本病
- ヨウ素の過剰摂取(イソジンうがい連用、造影剤の使用など)
- その他(先天性、甲状腺切除後、頚部外照射後など)
ヨウ素の過剰摂取
日本は、主に海藻摂取によるヨウ素過剰摂取地域とされます。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料ですが、過剰に摂取すると、甲状腺機能は低下します。過剰摂取をやめると、改善します。
表に示しますが、海藻の中でも、昆布が圧倒的にヨウ素含有量は高く、海苔やわかめはそれほどではありません。
検査や治療のためのヨウ素制限は、厳密に行う必要がありますが、日常的なヨウ素摂取に対する注意としては、固形昆布とイソジンうがい薬の回避程度が、長期継続できるラインではないかと思います。
チラーヂンSの補充を行っている方は、基本的にはヨウ素制限は不要です。
造影CT検査や子宮卵管造影検査には、ヨウ素含有の造影剤が用いられますので、検査後に一過性に甲状腺機能が低下することがあります。
ヨウ素含有量
摂取量 | ヨウ素含有量 |
---|---|
昆布(乾燥5cm角 5g) | 8-9mg |
昆布佃煮(5-10g) | 10-20mg |
とろろ昆布(5g) | 9mg |
昆布だし汁(昆布0.5-1g) | 1.5-2mg |
ヨード卵(1個) | 0.4-0.7mg |
ひじき(乾燥5-7g) | 1.5-2mg |
わかめ(乾燥5g) | 0.05-0.15mg |
海苔1枚(2g) | 0.12mg |
寒天(10g) | 0.18mg |
イソジンうがい(2ml) | 14mg |
*日本人成人の1日の摂取推奨量は150μg、上限で3mg
*薬剤師のための甲状腺疾患服薬指導マニュアルから引用改変
ヨウ素系うがい薬(イソジンうがい薬)について
ヨウ素には殺菌作用、殺ウイルス作用があるので、消毒剤として広く使われています。
ヨウ素系のうがい薬には7%の「ポビドンヨード」が含まれており、15—30 倍に希釈して使用しますが、1回のうがい液には14-28mgのヨウ素が含まれます。
このうち口腔、咽頭粘膜から体内へ吸収されるヨウ素の量は不明ですが、日常、食品から摂取する量よりもかなり多いヨウ素が吸収される可能性があります。
ヨウ素は生命維持に必須の甲状腺ホルモンの原材料ですが、必要量以上に摂取することにより、甲状腺機能に異常が起こることがあります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準 2020」では、1日に摂取して良いヨウ素の上限量を3mgとしています。
一時的にこの量を超えて摂取することがあっても構いませんが、長期間にこの量を超えて摂取することは甲状腺機能にとって好ましくありません。
多くても1週間に20mgまでと考えられています。
甲状腺機能異常をおこさないヨウ素系うがい薬の安全な使用頻度と使用期間については明らかではありません。
感染予防を目的とした長期の連用は推奨いたしません。